イスラエルワイン近代化の歴史息づくティシュビのマルベック

ティシュビ・エステートのマルベック

マルベックと言いますと、完熟した果実の旨味を凝縮しながら、渋みは控え目で柔らかなタンニンが凝縮感や濃厚感を醸し...と言った印象が浮かびます。
こんな味わいに自然派ワイン造り息づく、濃厚なだけではないエレガントな味わいを見せているのがこのティシュビのマルベックなのです。

イスラエルワイン造り近代化の当初から導入された品種の一つ

イスラエルにおける近代のワイン造りが、シャトー・ラフィットのオーナーであったエドモン・ド・ロスチャイルド男爵による1880年代の投資から始まったことには何度も触れてきましたが、この時期にシャトー・ラフィットより持ち込まれましたのがカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、マルベックの3種類。
当時、マルベックはボルドーの中核品種でしたし、ロスチャイルド男爵の強い意向もあったんでしょうね。
そしてマルベックは、イスラエルワイン近代化の当初からイスラエルに持ち込まれることになるのです。

当時のイスラエルにおけるワインの品質

ワインは宗教的な意味合いで使われるコーシャワインが中心で、その味わいはといいますと、『風邪を引いたときに飲むシロップのように甘ったるい味わい』だったと聞いたことがあります。
イスラエルワインの試飲会で、ワイナリーの名前は忘れましたが『シロップのような』と表される甘い味わいのワインに出会いまして、『多分、これが昔のコーシャワインの味...』と、妙に納得したことを覚えています。

さて話はロスチャイルド男爵の頃に戻りますが、甘いコーシャワインを中心とした市場のニーズは高品質ワインとはかけ離れたものであり、ボルドータイプのワイン造りは根付かなかったようです。
イスラエルで高品質ワインが注目されるようになるのは、1990年代のゴランハイツ・ワイナリーの成功まで待たなくてはならなかったのです。

それでもマルベックは生き続けて...

そんな変遷を経ながらもマルベックは静かに生き続け、近年になって俄然状況が変わってくるのです。
マルベックを造るワイナリーが徐々に増えるにつれ、中から高品質のマルベック種のワインも見られるようになります。
イスラエルの気候はマイクロクライメイトと称されるように様々な気候環境が見られまして、特にイスラエル北部のガリラヤ地方やゴラン高原の気候がマルベックに向いていると高く評価されるに至り、マルベックはイスラエルに向いたブドウ品種であるとさえ考えられるようになっていくのです。

エレガントな味わいのティシュビのマルベック

男爵に請われてブドウ造りを始めたティシュビ・ワイナリー

ここでティシュビ・ワイナリーと言いますのは、まさにロスチャイルド男爵がイスラエルでワイン造りを始めたときに、男爵より請われてブドウ造りを始めたワイナリーです。
ティシュビのマルベックには、その頃からの歴史が息づいているともいえるでしょう。

ティシュビ・シングルヴィンヤード|マルベック2012

このティシュビのマルベックは、エステート・シングルヴィンヤードシリーズの中の1本で、黒ラベルが貼られており、特別の位置づけのワインであることが窺えます。
ハイファ地区のギヴァト・アダ葡萄園で収穫されたブドウから造られており、2週間の醸しを経て最初の圧搾で絞られた高品質ジュースのみが使われ、12ヶ月間のオーク樽熟成を経てノンフィルターで瓶詰めされています。

品の良い味わい広がる赤ワイン

ヴィンテージから8年目を迎えた頃 の味わい

色は濃い赤紫色をしていて、ブラックベリーやブルーベリーの香りに完熟感漂うプルーンや干しぶどうの香りが重なり、タバコ香あるいはカカオの香りも入り交じる濃密な香りが漂います。
タンニンと果実味が一つに溶け合って豊かな味わいを醸し出し、柔らかく調和の取れた穏やかでエレガントな味わいが広がります。

酸味は控え目で、重厚感が漂よいますが決して重た過ぎることはなく、バランスの良い、深みのある、穏やかで優しい味わいが実に良いですね。これに後から厚みのある柔らかなタンニンの刺激が優しくまとわりつき、長い余韻の中に漂うほのかな果実の甘味も心地良さを誘います。

繊細で品の良さ漂うマルベック

自然派ワイン造り香る、繊細で品の良さ漂うマルベック

十分なふくよかさと厚みを感じさせながらも、ジャミーと表現されるような濃密感とは一線を画し、優しく落ち着いた、しっとりとした雰囲気が品の良さを醸し出しています。
日本人の繊細な感性にとても良く合う個性豊かなマルベックで、自然派ワイン造りのティシュビの実力を遺憾なく発揮していて、ぜひおすすめしたい1本と言えるでしょう。

生産者であるティシュビ・ワイナリー

1882年に設立されたティシュビワイナリー( Tishbi winery )は、イスラエルのワイン作りで重要な役割を果たしたエドモン・ド・ロスチャイルド男爵の依頼を受けてブドウ作りを始めました。
地中海を臨むカルメル山麓から始まったブドウ作りもゴラン高原を含むガリラヤ地方、エルサレム近郊のジュディアンヒルズ、そして南のネゲヴ砂漠とイスラエル全土に広がっています。
土壌の持つ力を信じてブドウを育てるやり方を創業以来続けていて、農薬や殺菌剤、除草剤は使用せず、また肥料を使う事もなく、昨今で言う自然派ワイン造りを行っていまして、コーシャ認定とともにヴィーガン認証も取得しているワイナリーです。

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