テルアビブから北へ約50㎞程に位置する、中北部のビンヤミナと言う町にマルガリット・ワイナリーはあります。元々は1989年にレホボットと言う中南部の町に設立されたのですが、2013年に現在のビンヤミナに移りました。
家族経営の小規模ワイナリーなのですが、イスラエルでは1番とも言われるクオリティーの高いワインを生み出しています。
初代オーナーのヤイール・マルガリットさんはテクニオン大学で博士課程を修める物理科学者でしたが、アメリカでの研究員時代にワイン造りに出会います。その後、2004年から約7年は北部のテルハイ大学でワイン研究科を立ち上げ、醸造学などの教鞭を取ることになります．．．
ワイナリー設立当初は、約束していた買い付けの葡萄の量を減らされたりするなど色々な苦労もあったそうです。
同ワイナリーのモットーは ”品質の維持” 。
立派なビジターセンターもなく、ワイナリーの外に看板も見当たりません。
生産量は徐々に増え、概ね20,000本のワインを生産していますが、そのほとんどを春先にメールで送られてくるお得意さんやワイン愛好家だけに販売するスタイルを貫いていまして、残りの僅かをイスラエル国内の販売に回しています。
灌漑による栽培が広く行われているイスラエルにおいて無灌漑栽培を実践していまして、自ら栽培した上質な葡萄を使用することによる質の高いワインを造り続けています。
良いワインを作るために全ての葡萄を取りつくす事は無く、良い葡萄の中から75％だけを選んで収穫するそうです。
現在はワインメーカーとして従事する息子のアサフさんが葡萄の突然変異（進化？）についても詳しく解説してくれまして、最初に植えた葡萄がこの国の気候に合わせて変異してきていると言っていました。
日本の著名なソムリエである田崎真也氏もここを訪問しています。まだまだイスラエルワインが世の中で認知されていなかった時期に、『イスラエルの素晴らしいワイン』と紹介した記事が広く知られています。
テイスティングしたワイン：
1.白 Riesling
2.白 Chardonnay
3.赤 Optima
4.赤 Paradigma GSM
5.赤 Cabernet Sauvignon
6.赤 Enigma
中でもカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドのEnigmaは素晴らしい味わいでした。
カベルネ・ソーヴィニヨンの色味は深紅色。
香りはバニラ、ブラックベリーとバレルの豊かな香り。
豪快な酸味が多少回り始めると同時にタバコやカシス、ベリーの濃厚なテクスチャを感じる事ができます。
抜栓直後は、一口目は酸味がふわっと広がり、後からゆっくりと深みある苦味も感じます。
甘みは少なめで、舌にまとわりつく感触は気持ち良い余韻を楽しませてくれます。
上品さの中に力強さを感じる素晴らしいワインです。
写真＆記事：ツチダエリヤ
訪問日：2024年8月11日
【 付記 】
ヤイール・マルガリットさんは、ワインメーカーであり、教育者であり、生産者達からワインの教科書として広く知られる専門書の著者でもあります。
そしてイスラエルが高品質ワインへと向かう土台を築き上げた、偉大な先駆者の一人として尊敬されています。
1991年に最初のカベルネ・ソーヴィニヨンをリリースするのですが、そのワインの品質とユニークなワイン造りによって、イスラエルの最初のブティックワイナリーとして、瞬く間に注目を浴びる事になるのです。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランなどのボルドー品種のワインの造り手としてイスラエルで最も有名なワイナリーでもあります。
